脚下照顧

 

                          会長  河野 紘

 

 

JACT誌に興味深い記事が載っていました。

マレーシアで「代替相補伝統医療国際会議」を開催

 『開催国のマレーシアをはじめ、インドネシア、イラン、サウジアラビアなど、イスラム色の強い国々から数多くの専門家が出席していたからである。これまでイスラム圏の医療がどうなっているのか、詳しく知る機会が少なかっただけに、貴重な会議となった。

 情報不足によって、私たちはともするとこうした国々の医療を遅れているものと思い込みがちだが、これらの国々の医療水準は極めて高く、統合医療への取り組みも先進諸国並みに熱心であった。・・・(中略)・・・このようなアジア諸国の統合医療への取り組みに対して、我国はまったく立ち遅れている。この世界の大きな流れの中で【鎖国状態】とも思えるほど医療の取り組みが停滞していることは、わが国民への健康医療に重大な影響を及ぼすものであり、大きく警鐘を鳴らしておきたい。』

JACT 2007 10 渥美和彦

さらに、「日本のオーソドキシー(確立された主流の権威)」と題した多摩大学名誉学長 野田一夫先生との対談で、

『渥美 ところが今の日本ではいくら僕たちがそのことを指摘してみても現在オーソドキシーの側にいる人達はあえて関心を向けようとはしない。つまり、当の欧米では“西洋医学”の本流に大きな変革が起こりつつあるのを知りながら、自分たちの変革にはひどく消極的なのだ。何よりもお上である行政が動こうとしないから、他も動こうとしない。困ったものだ。こういうオーソドキシーの体質こそ、君のような人間は一番拒絶反応を起こすはずだ。』同前

 民営化が目前に迫った郵便事業も海外向けの速達便部門では西洋諸国に大きく後れを取っていることが報道されました。憲法改正問題など、情緒的な国民性を利用して理性的な改革を阻んでいる勢力が日本を崩壊へと導いているように感じます。小泉改革を受け継いだ、戦後レジームからの脱却を掲げる安倍首相までもが散ってしまいました。

 我々の求める、鍼灸師法の制定も行政の壁は厚いものがありましょう。先ず我々自身が我々自身を見つめなおし、理性的に情報を分析し、戦略を練る必要があります。そして、対外発信を強力に行い、社会の趨勢を理性的なものにしていく努力が必要です。それでも、実現は難しいかも知れません。

 しかし、前掲の野田先生は、多摩大学に観光学科を作るために大いに努力され、オーソドキシーを突破されて実現されました。古くは、中尊寺の復興を遂げられた松永師、森永砒素ミルク事件を解決に導いた中坊公平氏などの例があります。本当に社会に役立つものであれば必ず成就するはずであります。 

「良医は国を治す」といわれています。我々の政府への提案は、国を治すことにつながる内容と風格を備えたものでなければなりません。少なくともそれを目指したものであるべきです。これこそがオーソドキシーの壁を打ち破る唯一の方策であろうと思います。

 オーソドキシーそのものは悪ではありません。それが、自浄作用を失い、その権威を悪用して私利私欲に走るような状況に立ち至ったときが問題なのであります。我々が自浄作用を失ったオーソドキシーの壁を打ち破って、鍼灸師法を実現するためには、先ず我々自身のオーソドキシーを健全にし、権威を尊ぶような状況を作り出すことが必要であります。もちろん、権威は尊ぶべき価値のあるものでなければなりません。

 「天翔ける日本武尊」神渡良平著  という本が出版されました。我国の肇はこのオーソドキシーをいかにして最良のものに打ち立てるかということに腐心しています。そして二十年ごとの遷宮によって初心に帰り、肇国の理想を再確認するというシステムを作り上げました。これこそ日本文化の精髄と呼ぶべきものであります。我々には先祖が打ち立てたすばらしい権威の見本があります。

 我々の活動は、鍼灸師法制定が目的ではなくて、それを利用して国民の保健衛生に資するということであります。そのために鍼灸師法が必要であるのです。ここのところを間違えないオーソドキシーであれば必ずや尊ばれることでしょう。そして鍼灸師法も成就すると信じます。

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