シンギュラーポイント          戻る

                                              平成22年5月23日

会長  河野 紘

 

シンギュラーポイント(特異点)という言葉があるそうです。それは、水が100度になった途端、沸騰して様相をまるきり変えてしまう状況をイメージするとよくわかりますが、ある時点を境に物事が急変する特異な点、転換点を言います。目立たないところでコツコツと積み上げてきたものが、あるきっかけで成就する、そのきっかけもシンギュラーポイントと考えられるでしょう。

現在、我々が置かれている状況は、もしも我々が営々と努力を積み重ねてきておれば、鍼灸師法制定のシンギュラーポイントとなりうる状況であろうと考えられますが、これまでの努力で水温を99度まで上げ得ているかと云うと、少し心もとないように思われます。とはいえ、これから大車輪で臨めば、厚労省の統合医療プロジェクトチーム設置をシンギュラーポイントにすることができるかもしれません。

我々が鍼灸師法制定を急がなければならない最大な理由は、中・韓両国の主導で進む鍼灸の国際標準化です。このまま放置すれば間違いなく日本鍼灸は国際標準の埒外に置かれ、今後の世界展開に甚だしい不利益を被るばかりでなく、国内においても様々な制約を受けるようなことになるでしょう。ですから我々はこのチャンスをシンギュラーポイントにしなければならないのです。我々は、日本鍼灸を守り、人類の福祉に役立てるために立ち上がらなくてはなりません。今すぐに鍼灸師法の具体案をデザインし、国会に請願すべきだと考えます。

516日に行われた日鍼会の創立60周年記念の特別講演で、黒岩祐治先生は自らが進めた救急救命士の創設運動については、国民のための救急医療という視点を原点と定め、問題が起こるたびにそこへ回帰して乗り切ったと語られました。我々の原点もまたそこにあるべきであります。世界的な統合医療化のうねりの中で、日本鍼灸を確固たるものにするためには国策による取り組みしかありません。今こそ我々鍼灸師の立場を鮮明にし、堂々と請願するべきであると思います。

しかしながら、現在の我が国の政治情勢は混沌としており、政党は当てにはなりません。志ある議員や官僚とともに国民運動として盛り上げ、政治が対応しなければならない状況を作り出すべきであります。それには救急救命士でノウハウを持つ黒岩先生のお知恵も拝借するべきでしょう。それはともかく、国会に請願し、国民に披瀝する鍼灸師法の内容や我々の統合医療における取組の具体案などの検討が、なおざりにされている状況下では全く話になりません。このことは厚生労働科学研究費補助金特別研究「漢方・鍼灸を活用した日本型医療創生のための調査研究」による提言の中でも鍼灸にかかわる言及がほとんど無かったことが証明しています。

これまでのところ、出ている意見には、

1、鍼灸師法か、鍼灸医師法か。湯液、あんまを加えるか否か。

2、柔整、OTPT、マッサージ、カイロプラクティック、等との関係。

3、養成機関は専門学校か、大学か。

4、大学は4年制か、6年制か。

5、免許は終身制か、更新制か。

6、卒後教育の方法。

7、混合診療と保険取扱。同意書の撤廃。

等がありますが、これらについて早急に意見を取りまとめ、内外に示す必要があると思います。

世界が注目する医療資源である日本鍼灸を生かすためにも、我々の態度を鮮明にし、鍼灸や鍼灸師の現状に対する理解者を増やす取り組みを増強すべきであります。