拝啓 安倍内閣総理大臣様


        「鍼灸師法を制定してください。」

                         山口県鍼灸師会 会長 河野 紘


 この度の内閣総理大臣ご就任、大変おめでとうございます。総理は御著書「美しい国へ」の中、その他で日本の伝統文化の重要性に言及され、これを守り未来永劫に伝えていく決意を披瀝されておられます。

四季の変化と多雨がもたらす豊かな自然、地震や台風などの天災。このような土壌により形作られた自然観が日本文化の根底にあると思います。アインシュタインやトインビーといった世界の知性が絶賛した日本文化、この誇るべき文化を守り通す決意を披瀝された総理に深い敬意を表明いたします。

我々が携わっている鍼灸治療は、中国から伝来したものではありますが、繊細な日本文化の中で育まれ独自の発展を遂げて参りました。杉山和一による管鍼法、松葉形鍼尖の発明は鍼の無痛刺入を実現し、腹診法は日本独特の診断法であります。今や鍼灸は立派な日本文化であると申せましょう。現在の世界の鍼灸治療は中国鍼灸が席巻しておりますが、「痛い」という定評があり、遅まきながら進出を始めた日本鍼灸は大変喜ばれています。

 我国でも明治以前は漢方薬と共に医療の中心をなしておりました。しかし、戦陣医療の必要から西洋医学に替わり、今日に至っております。しかし専門化しすぎた現代医学は様々な弊害を生じ、伝統医学である鍼灸などが世界的に見直されてまいりました。

 このような経緯の中で我国の医療制度においては、西洋医学と東洋医学の間に大いなる格差が生じました。そして、西洋医学の限界が指摘され始め、伝統医学が見直され始めた現在にあっても我国の医療制度の下では鍼灸は依然日影の存在であります。これは総理のご指摘の通り、とりわけ終戦後の自信喪失により伝統文化の価値など日本人としての誇りを失った結果であろうと存じます。

 我々は、

1.日本文化である鍼灸を伝承し、発展させるために、

2.全体観に立った治療により病者のQOLの向上のために

3.医療費を抑制するために、

 再チャレンジをしたいと思っております。そのために我々も応分の責任を果たせるような医療制度、教育制度の構築をお願いいたします。

 我々は、

1.鍼灸師の養成は5~6年制の大学教育に格上げし、資質の向上を図る。

2.卒後の研修制度を確立する。

3.医療保険の適用を緩和し同意書を撤廃する。

 ことを要望します。そしてこれらを実現するために、あん摩、マッサージ等と一括りの身分法を鍼灸専門の身分法に改めていただきたいのです。

 我々は鍼灸の潜在力は無限であると思っています。潜在力に留めるか開花させるかは鍼灸師の努力は勿論でありますが国策としての取り組みが有るかないかで決まります。既に中国や韓国では、中医師、韓医師として制度が確立しており、医療の一翼を担っております。また、欧米各国では医師が所定の研修を受けた後、医療行為の一環として鍼灸治療を行っております。研修内容も米国カリフォルニア州では大学卒業後3年間、大学院で修学するというレベルの教育が行われているということです。

このような世界の潮流の中で、日本の鍼灸は現状のままでは、とても世界に伍していくことはおぼつかなくなること必定でありましょう。微意をお汲み取りの上、宜しく対処していただきますようお願い申し上げます。

 安倍総理は戦う政治家を標榜されました。我々が久しく待ち望んだ政治家であると拝察いたしております。何卒、東洋医学もご利用になり、保健養生に努められて初期の目的を達成されんことをお祈り申し上げます。

                                                             敬具